über die Familie

「こんにちは、ミスター・レンドール」

 その人に話し掛けられたのは、理事長との対面を無事に終えて、そろそろ帰ろうかとレンドールが思っていたところだった。
 声の方に視線を向けると、柔和な顔の男性がこちらを見てほほえんでいる。

(えっと、誰だっけ……)

 親しげに話し掛けられたのだが、その顔に見覚えはなかった。

「Q・Pくんも」
「主任もいたの?」
「うん。彼女から話くらいは聞いたよ。おめでとう、Q・Pくん。彼女は一言もなかったことに怒っていたみたいだけど、ぼくは気にしてないからね。キミが家族を得られたことをまずは祝福したいと思ってるよ」
「ええと、その……」
「ああ。ミスター、あなたとは初対面でしたね、失礼しました。初めまして。ぼくはQ・Pくんの専属のトレーニングチームで主任を務めています」
「そう、だったんですね。僕は」
「U-17ドイツ代表監督ミスター・ケン・レンドール。あなたの顔をここで知らない人はいませんよ。そのような自己紹介は、必要ありません」

 Q・PはGTAで専属のチームによるサポートがあるのだと、彼からレンドールも聞いたことがある。具体的なことはGTAの内部事情でしかないので詳しくはないのだが、コーチは複数名いて、主任コーチがチームリーダーとして統括する存在となっているらしい。その人は穏やかな人で、Q・Pは彼を信頼できるコーチと認めているらしいのだ。
 レンドールはこっそりとQ・Pに訊いた。

「彼は『くん』と呼ぶんだね」
「主任は言っても直らないから」

 Q・Pは『Q・P』を自身の名前だと思っているらしい。だが、人に対してはいつも敬称は不要だと言っているようなので、こう呼ぶ人は珍しいのではないだろうか。

「その、それで、主任さんは僕に――僕たちに、どういった要件が?」
「いいえ、特にありません、ミスター。お祝いを言いに来たことと、もし彼女の態度であまり良い気持ちになっていないようだったら、その誤解を解きたくて」
「誤解……ですか?」

 というか彼女って理事長のことだろうか、とレンドールが思っていると、Q・Pから「主任と理事長は夫婦だよ」と補足があった。

(夫婦なんだ)

 性格的に少々棘のある理事長の相手としては、かなり柔和な雰囲気の男性だ。意外だと思うも、他人に結婚相手をどうこう思われるのも嫌なことだろうとレンドールは即座に考えを打ち消した。
 だが合点がいくことはある。彼がなぜ『主任コーチ』なのかという部分だ。理事長の夫なら、その重要な役割を担っていても不思議はない。もちろんQ・Pが信頼するだけの手腕を有することが大前提ではあるが。

「ええ。彼女の言い方がいつも剣呑なばかりなもので。ぼくはそれでもいいんですけど。ええ、彼女も、いろいろと複雑な状況なんですよね」
「状況は察します。僕がGTAにいたころはまだ理事であった彼女が今の地位にのし上がるためには大変なご苦労があるのでしょう」
「ええ、ええ。如何にもそのとおりですよ、ミスター。ああ、忘れもしません。あれはQ・Pくんが10になったころのことで、彼はGTAに所属していたすべての選手を打ち破ってみせたのです。あれは快挙だった。おかげで彼の後ろ盾であった彼女に理事長への道が開けたんですから」
「大袈裟だよ」

 Q・Pは軽く言うが、レンドールはその言葉を聞いて、かなり羨ましく思っていた。願わくは自分だってそれを傍で、一番近くで見ていたかったのに。
 出会った当時、5歳の少年に課された目標は、中学生の打倒。それは無理だとレンドールは憤った。だってまだ、まともな指導を受けられてもいないのに。身体だって未成熟だ。信じられない。せめてもう少し猶予があってくれたならと思っていた。そのときの判断に間違いはなかっただろう。
 そして、5年後の彼は高校生までをも倒してみせた。それはやはり、彼にそれだけのポテンシャルがあったからなのだ。そのことはレンドールにもよくわかっていた。あと三年、あと五年あれば、と思っていた。だからこそ、歯痒いとも思う。悔しいとさえ思う。自分が彼と共にいられなかったのは、あの頃の自分が無力だったからだ。

 過去を悔やんでも何もならない。ただ、レンドールは彼女と同じ苦労を知っている。若き名将。そう呼ばれるだけの地位に就くためには、相当な覚悟が必要だったのだから。

「彼女は理事長の一人娘で、もともとこの学園を継ぐことが定められていました。でも、あなたと会ったころには、その地位が危かった」
「どういうことですか?」
「彼女、決まっていた縁談を蹴って、ヒラのコーチなんかと結婚しちゃったんですよ。それがぼくです」

 レンドールはぽかんとした。隣を見ると、Q・Pも何となく驚いたようすでいる。「ボクも知らないよ」と彼は呟いた。

「たしか、グループ企業のなかでも大きな会社の子息との縁談で、まぁ、学園の経営を盤石にしようという意図があったとかないとか。ぼくは全然詳しく知らないんですよ。今でもただのコーチの一人で、ずっと、この学園の経営とは無関係にのほほんと過ごしてますからね。今はQ・Pくんのチームの専属なんですけど、Q・Pくんは、まったく選手として手が掛からない子でしょう? ぶっちゃけてしまうと、ぼくはかなり楽をさせてもらってるんです。彼女はお目付け役だと思ってるみたいなんですけど、ぼく、全然何もしてませんし」
「そう、なんですか……」

 主任は気楽に笑っていた。Q・Pも、特に何も言わない。ただ、コーチとしての質が悪い人でないということは間違いないので、何もしていないように言うのは、大体は謙遜なのだろう。Q・Pに過干渉しないのは本当であるとして。

「ぼくと結婚して、彼女はいろいろと陰で言われたんです。『だから女はダメなんだ』『心情だけで動く愚かな娘』『経営者に致命的に向いていない』『お飾りのお人形』……そういうわけなので、理事長になってからも、彼女はいつも気を張ってるんです。ぼくは学園の経営に興味がないから、面倒なら辞めちゃってもいいんじゃないかなぁと思うんですけど。彼女、あんなふうにいつも言うんですけどね、本当は学生さんたちが大事で大事で仕方ないんですよ。ぼくら子どももいないですからね。うん。学園の子たちのことはみんな、そういう気持ちでいるんです。だから、理事長としての役割を手放したくない。この学園をもっともっと大きくして、夢を叶える子を増やしたい。そういう意図なんです。彼女は変わらない人だ。だからこそ、Q・Pくんにはずっと、ずっと、期待ばっかりしているんだよ、彼女は。まぁ、大人の都合だから、キミには関係のないことだけど」
「初めて聞いたよ」
「関係ないことだからねぇ……」

 彼も苦笑している。たしかにGTAの戦略なんてものは、選手としてのQ・Pには無関係なのだろう。

「そういうわけで、Q・Pくんにはプレッシャーばっかり掛けてしまって申し訳ない。彼女にもいつも言ってるんだけどねぇ、Q・Pくんがキミを、学園を嫌いになったら意味ないでしょって」

(まぁ、今さら、なんじゃないかなぁ……)

 Q・Pは学園に恩義はあるが理事長は好きでないと割とハッキリ思っているようだが、レンドールは何ともコメントしないでおいた。

「あまりフォローにならなかった気がしますね。うん。元の性格の問題は、ええ、ありますので。ただ何というか、Q・Pくんが何も言ってくれてなくて彼女もショックなんだよ」
「言ったら反対するよね」
「そうなんだけどね。でも、そういうこと言う人がキミには必要だよ?」
「その点には僕が同意します。たしかにあなたも理事長も彼の家族ではないですが、彼に重要なアドバイスをすることはできたでしょうからね」
「必要ないよ。ボクのことはボクが決めるから」
「まあ、まあ。うん。ミスター・レンドール、これからはあなたが家族として、その子を大事にしてくださるのでしょう? 反対するとは言いましたけど、実際、あなたの人柄はよく存じています。ええ、さほど心配はしていませんよ。あなたの誠実さをぼくも信じましょう。それに、ぼくたちもQ・Pくんのことはこれからも見守っていきますからね。うん、大丈夫です」

 ぼくが彼女に助言をしたんですよ、と主任は笑った。

「ミスター・レンドールの信じた子はきっと世界へ羽ばたくだろうって」
「……ええと、僕とあなたは、初対面なんですよね? 先ほどから、ぼくのことを知っているように言われていると感じますが……」
「まぁ、厳密には違いますね。さっき言いましたけど、ぼくは当時からずっとヒラのコーチでしたから。あなたと同じ立場の。ほら、同僚だったんですよ」

 レンドールは目の前の、細いフレームのメガネを掛けた人の顔をもう一度よく見たが、記憶にその影はなかった。物覚えは悪くない方だと自分では思っていたのだが。

「とは言え、指導している選手の年齢層が違いましたので、関わり合うことはありませんでした。あなたがコーチになったときに全体で挨拶をしたことがあるのを聞いていたとか、その程度です。あなたをぼくが一方的に知っているのは、あなたがQ・Pくんと関わっていたからです。オーナーがあなたに手を焼いていると彼女にぼやいていたそうなんです。その話を彼女からぼくは聞いて、こっそりあなたを見に行ったんですよ。実は、若くて有能なコーチだって噂で知ってましたからね。どうして一人の子どもに執着するんだろうって、不思議に思って」

 それから、「恩着せがましいとは思わないでくださいね」と彼は少し笑って前置きをした。

「あなたを失うのは惜しい、絶対後悔するよって、ぼくも彼女に言いました。結果はご覧のとおりです。ぼくって意外と見る目あるでしょう?」

 Q・Pは隣でコクコクと頷いているが、レンドールは苦笑するしかない。

「まぁでも、あなたをちゃんと信じてQ・Pくんを守ったから、彼女は十分な成果を得られたんです。そこは良しとするのでしょう。何だか今でも禍根があるみたいで、あなたを見ると自分の失敗が思い起こされて嫌なんでしょうねぇ。これも一応弁明をすると、当時の彼女には、あなたを何とかするだけの力もなかったんですよ。何せもう理事のなかで排斥された状態だったもので。Q・Pくんについては、そもそもスクールが独断で引き取ったくせに自分たちの手には持て余していたというお粗末な話だったので、人道的にも途中で投げ出すのはどうかという主張ができました。でもオーナーがもう自分に楯突いたあなたに相当おかんむりで、あなたを切るか、それとも彼女自身を切るか、みたいな話にするしかなかったんですよ。うん。もちろん、だからって、今でも態度が非常に悪いので、ミスターが彼女を不愉快に思うのは仕方ないです。そこはぼくも手に負えません」
「不愉快な対応をされているとは思っていますが、僕の方は、嫌悪感までは抱いていませんよ」
「もっと怒っていいと思うよ、ケン」
「大人には自分ではどうにもならない事情が多いんだよ、青い鳥」
「その『青い鳥』って、インパクトがあって素敵だと思うんですが、ブランディングとかには使わない方がいい感じですか?」
「えっ、そうですね……まぁ、僕が勝手に言ってるあだ名のようなものですし」

 独特な感性の人なのかも知れないとレンドールは思った。あの、アクの強い理事長の夫というだけのことはある。一見打たれ弱そうで、芯はちっとも折れないので手応えがないというか。空気を殴っているみたいな感触の人だ。

「ええと、そういうわけで、今後ともよろしくお願いします、ミスター・レンドール。ぼくもQ・Pくんについては、これからも全力を尽くしますからね。Q・Pくん、あなたはぼくたちの最高傑作。折れぬ志持つ美しき翼。どうかこれからも頑張って」

 それでは、と主任はにこりとほほえんで、理事長室の方に戻っていった。

「ほとんどボクの知らない話だったよ」
「あっ、そうなんだ……僕だけが知らないのかと思って聞き入ってたよ」
「ううん。主任も普段はそこまで話さないから」

 つまりは本当に、理事長のフォローに来たということなのだろうか。

(今さらだけど)

 そう思うし、けれど、いつからでも修復しようとすることは無駄ではないのかも知れない、とも思う。これから先の付き合いも、きっと長くなるのだろうから。レンドールはQ・Pの肩をぽんぽんと叩いた。

 それからいくらか経ったのちに、理事長はQ・Pにも理事の娘の誰かと結婚させたいと目論んでいたらしいことがわかり、二人と彼女との溝は、結局あまり埋まらなかったのであった。

 それは、二人が家族となった翌週の出来事であった。

「急だけど、明日はキミと行きたい場所があるんだ。いいかな?」
「うん、平気だよ。どこに行くの?」

 レンドールはQ・Pをどこかに連れて行くのが好きな人だ。ちょっと前に、「結婚したから、もう我慢しなくていいと思ってるんだ」というようなことを言われて、Q・Pが、それはつまりえっちなことだろうか、ケンになら激しくされてもボクは――と、ドキドキしながら思っていたところ。

『これからはもっといろんな場所にキミを連れて行ってあげるからね!』

 と、言われた。別に何でもいいのだが、ちょっと、ほんのちょっとだけ、肩透かしではあった。

 彼曰く、これまでは、これでも抑えていた方らしい。コンサートに美術館、果てはバカンスから旅行まで、ありとあらゆる経験をすでにさせてもらっているとQ・Pは思っていたが、まだセーブしていたということらしいのだ。聖堂からお城、博物館から水族館に動物園、アメリカにでも、マダガスカルにでも、どこにでも連れて行きたいと熱く語っていた。
 もちろん、Q・Pがプロになれば旅行よりツアーや大会ばかりになるので、レンドールの思うように何でもできるということではないのかも知れない。ただ、そういう熱心な気持ちを抱いてくれていることに、Q・Pは深く感謝していた。レンドールは、いつも、たくさんのものを自分に与えようとしてくれているのだ。

 そのようなことが念頭にあったため、週末、土曜日に、外泊届をしっかりと提出してから来訪した――いや、帰ってきたレンドールと自分の家で聞いたその言葉に、どこか楽しい場所に連れて行ってくれるのかな、とQ・Pは思ったのだが。

「僕の親に会ってもらいたいと思っていてね」
「えっ。それって……」
「キミのことを紹介したいんだ」
「ケン、それは――」

 ――ちょっと遅くない?

「そういうのは結婚する前に行くべきだったよね?」
「うん。キミの言うとおりだ」
「ケンは両親にボクとのことを何か話したの?」
「うちは片親なんだ。母親だけ。結婚するかもって母さんに話してはいるんだよ。今さら僕がどうしても構わないとも言われたし」

 Q・Pには親がいない。家族がいない。だから、誰かに家族となる人を紹介する必要はなかった。そんなQ・Pでも、一般的に、結婚する前に家族にはそういう相手を紹介するものだろうということくらいはわかる。浮かれてすぐにオーケーしてしまった自分にも非があるのだが。
 レンドールがGTAの心象を下げたくないと言った理由が今急にわかった。

(ボクも、ケンの親に、挨拶にも来ない礼儀がない嫁だって思われてるのかも)

 これまでレンドールが家族に紹介するというようなことをQ・Pに言わなかった理由は、ひとつはQ・Pの方には家族がいないからで、もうひとつは、年齢差が大きいので周囲にどれだけ漏らして良いかわからなかったからだろう。或いは母親に反対されるおそれがあったのかも知れない。

「もし怒って勘当されちゃったらどうするの……ケン」
「Q・P、あまり心配しないで。大丈夫だから。もしも母さんに何か言われても、僕はキミを選ぶから心配はいらないよ」

 レンドールは「僕がキミを手放すことは絶対にないよ」と言ってくれた。この先にどんなことがあっても家族としてQ・Pを守ると。もしQ・Pとのことを母親に強く反対されたら、縁を切っても構わないとまで言ってくれた。
 けれどもQ・Pの気持ちは浮かない。

(そんなのは……もう、嫌だよ)

 彼に何を言われようともQ・Pは過去を悔いている。だから、もうレンドールから何も奪いたくないと心から思っている。

 レンドールには、やっぱりわからないのだ。寄る辺がないということの本当の悲しさが。虚しさが。淋しさが。もちろんそれを理解してほしいとはQ・Pも思っていない。自分も、親や兄弟がいる人の気持ちなどはわからないし、たとえば絶対的に信頼し合うべき人々で争う惨めさのようなものは到底わからないことだろう。
 そして、どうあれ自分を選んでくれるというレンドールの言葉はとてもうれしい。その言葉を信じて生きていけると、そう思う。

 でも、ひとりぼっちになってしまう悲しさをレンドールには味わってほしくないから――。そんなことになってしまわないように、レンドールの家族からも、家族に準じた人として、少しでも認めてもらえるように努力しなければならないと思うのだ。
 人より飛び抜けて愛想がないけれど。不機嫌なのかと誤解されるくらいに無表情だけれど。そのうえこんなにまだ年齢も下で、至らないことばかりだけれども。自分が、何とかしなければならない。
 それは結婚して初めてのQ・Pへの試練だった。

 明日はレンドールの母親に会うのだから緊張して眠れない、ということはQ・Pにはなかった。前夜もセックスをして、ぎゅっと抱き締められながら眠ったので、あまり難しいことも考えずにQ・Pは愛しい人の腕のなかで深く眠っただけだ。
 そして目が覚めてから、服をどうしようかと慌てたのだった。普通の格好でやってきてしまって、部屋に置いてある着替えも似たり寄ったりのものしかないからだ。

「そんなことは気にしない人だよ。多分、向こうも部屋着だと思うし」

 レンドールはのんきにそう言ったが、だらしない格好では行けない。第一印象は人間の感情を大きく左右する。
 結局頼んで、レンドールの実家に着く前に、デパートで服をコーディネートしてもらった。レンドールは嬉々としてそれにお金を出してくれて、自分が言い出したことだから当然自分が払うと主張するQ・Pに、「もう家計は一緒のようなものなんだから、どちらが出しても本質的には変わらないよね?」と言いくるめられてしまったのだ。レンドールは案外押しが強い人である。

 それから多少の寄り道をして、いつものようにレンドールの車で辿り着いた家は、郊外の静かな家だった。

「ただいま、母さん。連れてきたよ、僕の新しい家族を」

 チャイムを押してレンドールは淀みなくそう言った。家族という言葉は、何度聞いても心地良い響きがする。Q・Pは薬指の指輪に目を落とした。寮の部屋で一日中でも眺めてうっとりしていられる大切な結婚指輪だ。

 ガチャリと音がして、扉が開く。

「久しぶりだね、母さん。こっちが僕のパートナーのQ・P」
「初めまして、ブラウです。みんなからはQ・Pと呼ばれています」

 Q・Pは生まれて初めて、Q・Pではなく本名で名乗った。そうするのが家族に対しては必要なことなのではないかと思ったのだ。

「いろいろと話は聞いてるわ、Q・P。ようこそ」

 レンドールの母親は手を差し出して笑った。その笑顔は、いつもホッとさせてくれるレンドールと似た面影がある。これが家族という人なのだ、とQ・Pは思った。握られた温かい手も、同じ温度だと感じた。

「ご挨拶が遅れて申し訳ありませんでした」
「あら、ケンからも聞いていたけど真面目な子ね。気にしなくていいわよ。この子も子どもじゃないのだし」

 とりあえずQ・Pはホッと胸を撫で下ろした。それから、お菓子を持ってきたのでどうぞ、と紙袋を渡す。これはQ・Pがちゃんと自分のお金で買ったものだ。
 レンドールの母親は、珍しそうな顔で紙袋を受け取った。どうやら日本などでは、ご両親にご挨拶をする際に手土産を持っていくことで好感度を上げるという手法が取られているらしいので、Q・Pもその真似をしてみたのである。レンドールから母の好きなお菓子だろうというものをリサーチして買ったので、渡されて迷惑にはならないだろう。

 二人は応接室に通された。

「ケンが話しているかも知れないけど、父親はいないのよ。いないというか、まぁそういうことになっているというか、まだあれも生きてたかしらね」
「お義姉さんのことも聞いています」
「ええ、そうね。今日は誘ったんだけど、シャルロッテ――あの子の娘のバレエがあるから来られなかったの。今度また会ってあげてちょうだいね」
「はい。ぜひ」
「そうだわ。ケン、シャルロッテの年齢を覚えてる? あの子はもう15歳よ。あの子の方がよっぽどQ・Pに年齢が近いんだから、気を付けた方がいいんじゃないかしら? あの子ったら、きれいな顔の子が好きなんだもの」
「えっ、そうだっけ? ハハ、それは怖いなぁ」

 どきどきしながらQ・Pは発言していたが、レンドールの母親から、嫌悪感や困ったような表情は見られずに安堵していた。

「ケンから結婚を申し込むつもりの子がいるって聞いていたのよ。どういう子か、聞いても答えてくれなかったけれどね。失敗したらカッコ悪いから、成功したら紹介するとしか言ってくれなくて」
「わわわっ、母さん、そういう話はしなくていいよ」
「失敗するか危ういプロポーズなんてやめた方がいいわよって言ったんだけど。この子も妙に頑固で、突っ走っちゃうというか」

 その言葉には思わずQ・Pも頷いた。悪い意味ではないのだが、たしかにそれはレンドールらしいところだ。

「あなたの昔のこともね。聞いたことがあったわ、ケンが辞めたスクールで預かっていた子でしょう?」
「そうです」
「だからQ・Pという名前も、前々から知っているのよ。私も親として息子の活躍を見ているものだから、あなたがケンのチームにいた子だということも知っているわ。まさか、家族として連れてくるとまでは私も思っていなかったから驚いたけれど」

 あ、やっぱり驚いていたんだ、とQ・Pは思った。自分が言うことではないが、あまり感情の波風が立ったようには見えなかったので、そもそも相手が誰なのか知っていたのではないかと思っていたのだ。
 もしかすると気を使われているのは自分なのかも知れないとQ・Pは思った。レンドールが事情を話しているのなら、自分が孤児だということを、この人も知っている可能性が高いのだ。

「でも、あなたにもひとつ残念なことをお知らせするわね」
「残念なこと?」
「ええ、そうよ。この子の父親、つまり私の元夫のことだけど、これがロクでもない男でね。もし、この子もそういう男に育っていたら、私はあなたとの結婚を認めなかったと思うわ」

 レンドールの母親は、両手を肩くらいに上げて、首を横に振った。レンドールが横で苦笑している。

「まぁ、この子はそういう父親がいたにしては、私が言うのもおかしなことだけれど、誠実に育った子よ。安心してちょうだい」
「わかります」
「母さん、Q・P……」

 うんうん、と深くQ・Pは頷く。レンドールほど真面目で誠実で思いやりがある人はいないだろう。

「だからあまり心配はしていないけれど、何かあったら私に連絡を寄越して構わないわ、Q・P。ケンのパートナーなら、あなたはもう私にとっても家族なの」
「お義母さん……」
「よろしくね、Q・P。ケンから料理上手だってことも聞いているわ。今度私にも食べさせてね」
「こちらこそよろしくお願いします。もちろん、何でも作りますので」
「あら、いいわよ、普通に話して?」
「……うん、わかったよ。これからよろしく、お義母さん」

 レンドールはそんなやりとりを、にこにことほほえんで見ていた。そのように、始終和やかなかたちで、レンドールの母親への挨拶は終了したのだった。

 レンドールの姉とは、それから一か月したころにようやく会う機会を設けることができた。

「アンタ、こんな若い子を貰って……なんて私が口出すことじゃないか。でも、泣かせたら承知しないわよ。何かあったら言ってちょうだいね、Q・P」
「姉さん」
「ありがとうございます、お義姉さん」

 元気な人だ、とQ・Pは思った。いや、レンドールも元気な人ではあるのだけれど。パワフルというのだろうか。レンドールよりも少し焼けた肌が溌溂としている。瞳は鋭く、彼女は先日会った母親に似ているのだと思う。レンドールとは、二人ともあまり似ていないように感じる。レンドールは父親側に似ているのだろうか。

「ああ、シャルには結婚してるとか言わない方がいいわよ。あの子、多分普通に言っちゃうから。保証できないわよ」
「ええっ、そうなの?」
「あのくらいの子どもの口の堅さなんて、少しも信用できるわけがないじゃないの」

 話が終わってから紹介された彼女の娘のシャルロッテは、ふわふわのウェーブの髪の少女で、なぜか雰囲気がレンドールと似ていた。遺伝子とは不思議だとQ・Pは考える。

「こんにちは、叔父さま。お久しぶり」
「やあ。久しぶりだね、シャルロッテ。元気そうだね」
「ええ、もちろんよ。それからこんにちは、Q・P。あなたのこと、テニスの試合で見たわ」
「ありがとう、シャルロッテ」
「よろしく、Q・P」

 シャルロッテがまったく無垢に自然にするりとQ・Pの腕に抱き着いたので、レンドールが驚いた顔をしていた。彼の姉は笑っている。

「シャルー、その子のこと、もう気に入ったの?」
「ええ、とっても。仲良くしてね、Q・P」
「どうも。よろしく」
「ちょっと、姉さん」
「アッハハハハハ。ケン、大丈夫よ。シャルってばきれいなものが好きなだけだから」
「……姉さん……!」
「私譲りなのよ。アハハハハ!」

 Q・Pは振り解くことの難しい腕の扱いに困っていた。義姉の心証を悪くしたくはない。しかし、シャルロッテに興味がないだけでなく、レンドールが心配そうにしているのが気がかりだ。実際Q・Pはそんなに女の子に興味がない。というか、好意の方向性がどうやら年上の男性の方に寄っているんじゃないかと最近では思う。なので、レンドールが心配するのも、何だか虚しいことであるような気がするのだ。

(でも心配されるのはうれしいかも知れない)

 いつも、多分レンドールはモテるんだろうなと密かにQ・Pは心配しているので、ちょっとでもレンドールもそういうことを思ってくれたら、うれしい。
 でも、そんなことを考えるのは悪いことなんだろうなと、こっちをオロオロ見ているレンドールを見ながらQ・Pは思ったのだった。

 ――と、何にしても急に家族が増えたものだから、Q・Pは少々戸惑っていた。何せこれまでずっとひとりで生きてきたのだから。対応の解がよくわからない。

「家族との過ごし方ぁ? そんなん人それぞれだろうが。人っつか家族それぞれ?」

 気になってルイスに聞いてみたところ、そういう当たり前らしい答えが返ってきた。

「何があってそんなん聞いてんの?」
「一般的にどうなのかと思って」
「ふーん……。あ、そういや、Q・Pをウチに呼べって言われたんだった。忘れてたわ」
「何の話?」
「ウチの母ちゃんが、Q・Pに一度会いたいって」

 それってどういう状況なの? とQ・Pは思った。レンドールのときは、もちろん理由があってのことだが、友人の母親との面会は、当然の出来事だろうか? 家に遊びに行ったら親がいました、とというシチュエーションならば、Q・Pでも何とか想像が付くけれども。

(もしかして、息子に相応しい友人かどうかチェックされてる?)

 ルイスの家は大病院だ。Q・Pもよく知っている。そしてQ・Pは孤児である。かなり今さらのことではあるが、格が違いすぎる友人だ、と問題視される可能性があるのかも知れない。例えばルイスがスポーツドクターになりたいと言った話を踏まえて、Q・Pのことを聞いたので――とか。

「あーなんか別に俺のことは関係ないとか言ってたから、何かあるんじゃね?」

 そんなことを言われても、キャロル病院の院長との接点などQ・Pにはない。ルイス以外の話があり得るのだろうか、とQ・Pは不安に思った。

『心配なら僕も付いていこうか?』

 夜に電話をした際に、ルイスの母親と会う件についてレンドールに話したところ、そのように案じてくれたのだが、自分と友人のことでレンドールに迷惑を掛けるのもQ・Pは気が引けた。レンドールは、このところ忙しいのだ。引継ぎのための事務作業に追われていると聞いている。家では、何だかテニスの教本やらコーチングだのという本ばかり読んでいるようだし。そんななかで、わざわざ時間を空けてもらってまで、頼む気持ちにはなれない。

「大丈夫だよ。ケンも毎日忙しそうだから、付いてきてもらうほどじゃないよ」
『えっと、Q・P。僕の事情を考えてくれるのはキミが優しいからだと思うけど、僕としては、キミが不安なら、そっちを優先したいんだ』
「わかった。それじゃあ、話が終わったら電話したいから」
『うん。電話に出られるように気を付けておくからね』

 お互いのことを考えるときに、擦り合わせが必要なのだとQ・Pは最近学んだ。自分だけが相手のことを思っていると考えるのも間違っている。だからこれは、レンドールの自分への心配を受け入れたうえでの折衷案だろうと思う。
 ただ、嫌なことを言われるのではないかと委縮してばかりでいるのも正しいことでないのかも知れないとQ・Pは考えていた。先日のレンドールの家族の件でもそう思ったのだ。まるで相手が悪意を持っているかのように思うのは、自分の大切な人のことをそう考えられてしまうのは、きっと良い気持ちにはならない。

 Q・Pはかつて周囲から『クヴァルク・プッペ』と言われていたこともあって、自分は誰から見ても『いらない人形』なのだと感じるようになってしまっていた。だから無意識に、他人は自分を不要だと思っているのだと感じて、身構えてしまう。ハリネズミが針を出すように、傷付けられないように武装してしまうのだ。
 もっと信じよう、と思う。レンドールの家族のように、ルイスの家族も、Q・Pのことをちゃんと受け入れてくれるのだと。

(でも。だとしたら、ボクに用事って何だろう?)

 それだけは解けない疑問だ。その意味で不安がやはりあるので、一番頼りにできるレンドールが電話の前で案じてくれているのなら少しは安心できると思った。

「お呼び立てしてしまって本当にごめんなさいね、Q・Pさん」
「いえ、Q・Pで平気です」
「そうですか。ではQ・P。今日は来てくれてありがとうございました。どうぞ、楽に座ってくださいね」

 ルイスの母親と会ったのは、金曜日の夕方のことだった。土日は都合が付かないらしいので、遅い時間になってしまうけどよろしくお願いします、とルイスから言伝を受けて、彼の家が経営する大病院の最上階にある院長室に向かった。内装はしっかりとしていて、理事長室に入るときのような感覚だ。

『まぁ、母ちゃんは優しいから、だいじょぶだろ』

 そう彼が言っていたとおり、物腰柔らかで穏やかな口調だ。年齢は理事長と同じくらいだろうと思うが、いつも威圧的な彼女との差は歴然。

「いつもルイスさんがお世話になっています。ルイスさんは、よくあなたの話をするんですよ。とても大事な友だちだと聞いています」
「そうなんですか?」

 Q・Pは面食らったが、まぁ、友人を悪しざまに言うようなことをルイスはしないだろうし、いつものようなテンションなら、そのように親としては思ってしまうのだろう。

「お話したいことはルイスさんのことではないのですが、でも、どうか、あなたにはお礼を言わせてください。ありがとう、いつもルイスさんと親しくしてくれて」
「ボクは、そんなふうに言ってもらうようなことは……」
「いいえ。あなたは気付いていないのかも知れないけれど、ルイスさんはあなたと過ごすようになって、ずっと楽しそうだったんですよ。ジョンもそう言ってましたからね」

 ジョンというのは、前に会ったルイスの執事のことだ。いや、ルイスから執事だと聞いたが、そもそもどういう種類の執事なのかはよく知らない。専属の執事だとか、そういう存在がいるのだろうか。

「ルイスさんが医者になりたいと言ったときに、私は、自身も医師である身として、とても喜ばしく思いました。主人も同じです。その選択に至った裏にはあなたの存在があるのでしょう?」

 その言葉にQ・Pは首を横に振った。

「ルイス自身が決めた道だと思います」
「ええ、ありがとう。ルイスさんは、ずっと、自分の将来について、思い悩んでいたようなのです。医師の子として生まれ、兄も姉も医師となった。当然自分も、環境的にはそうなるのが自然で、それを求められているのだろう、と。でも、定められた道を歩くのが自分の人生なのか……と」

 Q・Pも、自分も似たように感じたことを思い出した。自分の運命はGTAに引き取られた瞬間に定められていた。でもそれで良いのかと、たしかに悩んだことはあった。今は、誰かが自分をこの道に進ませたいと思っていたとしても、自分が決めた、自分の意志で選んだことだ、と納得できている。
 ルイスの母親は穏やかにほほえんだ。

「それで、思い切って無関係の場所を選んだようなのです。テニスは昔から好きで、それなりに、大人たちから褒められた経験もあったものですから。ふふ、入学前のアカデミーの視察で、まるで人ではないかのような美しいテニスを見て、一目でそこに決めたのですよ。あれは、あなたのことだったのではないかしら?」
「え? ルイスからそんなこと聞いたことないですけど」
「あら。ルイスさんも照れてるのかしらね」

 ふふふ、と彼女は笑った。Q・Pは話の真偽について何も言えずに黙る。

(ルイスが?)

 入学してすぐに自分に突っかかってきたルイスが?
 小学生くらいの年齢からいるアカデミーの子も決して少なくはない。他の誰かの可能性もあるし、話自体が、少々フェアリーテイルみたいだ。レンドールがシンデレラや青い鳥と呼ぶような、そういうロマンティックな感覚なのかも知れない。話半分で聞いておこうとQ・Pは思った。

「ですから、あなたをサポートしたいと望んで医師になりたいと志すことができたのは、あの子が自分の道を自分で選ぶことができたのは、本当に僥倖だったんです。それなら、私があなたに感謝するのは、おかしなことではないでしょう?」
「でも、本当にボクは何も」
「それでいいんです。だって友だちなんでしょう? 特別なことなんて必要ないわ」

 Q・Pは迷うことなく頷いた。言われたとおりだ。ルイスが何かしてくれたから友人だということではない。そしてQ・Pが何かしたから友人だということではなかった。傍にいて、お互いを尊重して、時間を過ごすことができるのなら、それは友人同士の絆なのだと言えるだろう。そのなかで彼が何かを見付けたのなら、友人として、光栄だと思う。

「本当にお話が逸れてしまいましたね。ごめんなさい。私、ルイスさんから話を聞いて、いつかあなたに会ってみたいと思っていたものですから」

 本題に入りましょう、と彼女は言った。
 今の話はそれなりに大切なものだったと思うのだが、これよりも重要な話があるということなのだろうか、とQ・Pは思った。

「あなたのお母さまのことです」
「……え……?」

 それは微塵も想像していない言葉だった。

 レンドールは可愛いパートナーのことをずっと心配していた。本来、彼は、自分が案じてやらねばならないようなか弱い少年ではない。精神的にも成熟しており、頭の回転に至っては自分よりもずっと速いだろうと思う。
 ただ、人間関係に関しては、昔のことが原因で、ストレスを感じやすいのだ。あまり表面には出さないようにしているようだけれども。だから、彼自身が「大丈夫だ」と言っても、あまりそれを過信してはいけないとレンドールは思っていた。

 レンドールがデスクの掃除をしながらスマホをちらちらと見ていると、着信が入ったので、すぐに隣の会議室に移動して電話を取った。

『ケン?』
「Q・P、どうだった?」
『うん……。すごく、大事なことを聞いたよ』

 ボクの母親について、とQ・Pは言った。

「え?」
『キャロル病院に、ボクの母親らしい人がいたんだって』

 それはレンドールにとっても、さすがに寝耳に水の話だった。

「Q・P……大丈夫?」
『うん。ボクは平気だよ』
「迎えに行くから、そこで待っていて」
『え? でも、ケンはまだ仕事が』
「定められた仕事は、もう僕にはないよ。すぐに行くから。今はどこにいるの?」
『まだ病院にいる』
「うん、じゃあ待ってて。今からなら、一時間くらいで行けると思うから」
『わかったよ。待ってるね』

 Q・Pが素直に頷いてくれたので、多分、動揺しているのだろうとレンドールは思った。
 無理もないことだ。レンドールは彼と出会って、彼の経歴を調べて、そのどこにも彼の両親についての情報がないことを知っていた。赤ん坊のころに孤児院から引き取られてきたという彼は、どういう理由で自分が孤児院にいたのかを知らなかっただろう。

(でも、母親……? 病院にいたというのは、出産したときのことなのかな……)

 レンドールが精々推測できるのはそれくらいだ。彼について、彼の知らない情報がレンドールにあるわけではない。
 急いで車を飛ばして、予定よりも早く病院に到着することができた。すぐに電話をすると、Q・Pはゆっくりと歩いて、レンドールの前にすがたを現した。時間はもう夜。薄暗いなかで、レンドールは自分の大切なパートナーのことを抱き締めた。

「大丈夫?」
「大丈夫だよ、ケン。来てくれてありがとう」
「とりあえず車で話を聞こうか。いい?」

 Q・Pはこくりと頷いた。

「今日はこのままうちに戻ろうと思うんだけど、寮に外泊届とかは……」
「もう出してあるよ」
「準備がいいね。安心したよ、さすが僕の『Quality of Perfect』だ」

 頬に口づけてから助手席のドアを開ける。Q・Pはいつものように静かにそこに座った。瞳の色は変わらず、青い空のように澄んでいる。レンドールもすぐに運転席に座る。Q・Pはレンドールが座ると、ゆっくりと口を開いた。

「多分、母親だと思うっていう人は、ボクによく似てたって」

 美しい顔がフロントガラスに薄っすらと反射している。
 プラチナの色の美しい髪。透き通る青い宝石のような瞳。そして――大理石で造られた像のように整った表情が揺らがない。

「ボクみたいに無表情で愛想のない人だったんだって」

 Q・Pは自分に関してそう感じているらしいとレンドールは思っていた。それは自分の心を常に傷付ける自虐というよりは事実的な確認であるようらしいので、常に、キミはそうではないと逐一否定すべきことではないようだ。実際のところ、Q・Pの表情が大きく変化することが少ないのは、客観的な事実である。それは表情筋の硬さだとか、彼自身が精神的に強いため他人よりも強い感情に揺さぶられることがないというようなことが主な理由である。愛想がないと言っても、いつもにこにことしてはいないという程度だと、レンドールは思っているが。
 レンドールは彼の話を聞きながら思い浮かべてみた。広い病室のベッドで窓を見つめる、Q・Pによく似た長髪の女性のすがたを。

「その人は、今……」
「亡くなったんだって。子どもを産んで、すぐに」
「じゃあ」
「産まれた子は孤児院に引き取られたって聞いたよ」

 おそらくその子が引き取られた孤児院というのが、Q・Pがもともといた孤児院だったのだろう。

 Q・Pが話してくれたところによれば、その亡くなった女性を担当していた看護士が、目を惹く容姿を覚えていて、ルイスが出るというので院内の至るところで付いていたU-17ワールドカップの試合で偶然目にしたQ・Pが、彼女によく似ていると驚いたらしい。彼はあのときの彼女の子なんじゃないかしら、と。

『滅法美人で、とても素っ気ない雪の女王みたいな人で、ちょっと浮いてたのよね。でも、私なんかは好きだったわ。だって全然嫌な人じゃなかったもの。あの鋭い視線を見て怒られていると感じるのは、心がやましいだけなのよ』

 その印象を聞いただけでも、ああQ・Pっぽいな、とレンドールは思った。Q・Pはひどく誤解されやすいが、本来は非常に丁寧で優しい子だからだ。

「本当は、患者の情報を教えるのは誰であっても禁止されていることだけど、他にも気になる点があるから、どうしても伝えた方がいいと思ったって言ってた」
「どういうところが?」
「その人、いつも病室でテニスの試合を観てたんだって」
「……! テニスを」
「うん。それから、父親は最後まで病院に現れなかったらしいけど、その人、有名なテニス選手なんじゃないかって。父親の話はしなかったけど、この子も将来はテニス選手になるって言ってたらしいから」

(もしかして、隠し子とか……?)

 あまり道徳的に良いことではないのかも知れないが、何らかの理由で自分の子と言うことができないような男性とのあいだの子どもであるとしたら、相手の素性や名前を言わないということもありえるだろう。レンドールは彼くらいの子どもがいそうなプロ選手の顔を頭に浮かべてみたが、具体的に誰がということが思い付くはずもない。

「父親のことは事実じゃなくて推測だから、あまり信じていないけどね」

 Q・Pの言うとおりだ。ただ、レンドールもずっと引っかかっていたことがある。GTAはなぜ赤ん坊を引き取ったのかということだ。
 通常のテニススクールでは、いや、学校でも考えられないだろう、赤ん坊を引き取って育てるなどということは。事実GTAでこれまでもそういった試みがなされていたということはないし、孤児院に赴いて有望な少年を探していたという話だって聞いたことがない。
 ではなぜQ・Pは生まれてすぐに引き取られたのか。

(もし、プロのテニス選手の子だと知っていたら)

 或いはQ・Pが推測だと言ったように、プロ選手の隠し子らしいという噂を聞いたとしたら。それが単なる噂だとしても、その子が孤児院に預けられることになったと聞いて、手を伸ばしたくなるということは、あるのではないだろうか。
 血筋がどれだけスポーツ選手に有用なものであるかわからない。ただレンドール家にスポーツ選手はおらず、ボルクのように、プロテニス選手を排出している一家もいる。だから、優秀な血統ならそうであるだろうと期待することはあり得る。

「子どもが生まれたのが18年前の春。具体的な日にちは覚えていないけど、3月だったみたい」
「うん。キミが生まれた時期と一致しているね」
「それから、子どもの名前を考えていた紙に、不思議な文字が書いてあったんだって。Q・Pって」
「えええっ」
「そっちは本当にただの偶然だよ」

 その人は、どんなことを思ってその文字を書いたのだろうか。きっと、クヴァルク・プッペではなかっただろう。Quality of Perfectでも、なかったかも知れないけれど。
 Q・Pはじっと窓の外を見た。

「――子どもが生まれるのを楽しみにしていたって」
「……うん。そう思わない母親はきっといないね」
「ボクは、ずっと……」

 Q・Pはしばらく口を閉じていた。続くはずだった言葉が、レンドールにはわかるような気がした。
 ――ずっと、いらない子だと思っていた。
 そう彼が思うだけの傷がある。そんなことはないとレンドールがどれだけ言葉を尽くしても、愛しても、それを完全に埋めることはできない。ひとに付けられた傷を、自分なら完全に癒せると思うのは傲慢だ。痛みは所詮他人。だから、自分には必要な、大切な人だとわかってくれたらいい。自分にできるのはそれだけだ。

「DNA鑑定とかも、いろいろな手段を考えればできるみたいだけど……今の話だけでも十分だと思う。孤児院にもちょっと電話で聞いてみたから。ボクが病院から引き取られたって話は本当なんだって」
「そっか。思い掛けないかたちでキミのお母さんのことがわかって、僕は少しうれしい気がするけど……、キミはどう思ってるの?」
「わからない。……わからないよ、ケン」
「そうかい。そうかも知れないね」
「わからない……その人のことを、どう思ったらいいんだろう……」

 頭を撫でると、Q・Pはどこか淋しそうな瞳でこちらを見た。人の感情に正しい反応というものはない。ただ、あるがままの感情がそこにあるだけだ。うねるような、波打つような、物悲しいような……。

「死んだって聞いても、何とも思えない。身体が弱いから出産は危険だって言われてたって……」
「でも、キミを選んだんだ」
「きっとそうなんだね」

 深い感情に翻弄されるQ・Pの瞳から、透明な雫が流れることはなかった。大丈夫、と呟く声が聞こえる。

「ケンがいてくれるから、大丈夫だよ。ボクは自分を見失ったりしない」

 レンドールにはわからない。生まれたときから親がいないと言われて育った彼の本当の気持ちが。どんなに頭の回転が速くて、周囲を理解していても、時折まるでカップの底に染みついているように、『自分はいらない存在だQualk Puppe』と思ってしまう彼の心が。
 母親のことがわかって、うれしいと思うのか。それとも、悲しいと感じるのかも。
 だから彼の言葉を聞いている。取りこぼしてしまうことのないように、注意深く。

(大丈夫みたいだね)

 そして、大丈夫だと言ってくれた言葉に偽りはないだろうとレンドールは頷いた。彼の感情が落ち着いたら、きっと、自分のなかで答えが見付かるだろう。どんなものでもいいのだ。もしかしたらその感情は喜びかも知れないし、怒りかも知れないし、或いは嘆きかも知れない。それがどんなものでも、レンドールは彼に寄り添ってあげようと決めている。

「どこに埋葬されているとか、聞いたりしたかな? もしできたら、キミのお母さんに挨拶したいと思うんだけど」
「聞いたよ。共同墓地にいるって。家族は誰もいなかったみたいだから」
「じゃあ今度二人で行ってみよう」

 Q・Pはその言葉に頷いた。

 翌週にレンドールが連れていってくれた墓地には、墓石に碑銘が彫られていた。通常、共同墓地と言えば、名前もないままに埋葬されるものだろうと思ったが、どうやらどこかの団体が彼女の墓石を建ててくれたらしい。

「GTAかな」
「多分、そうなんだろうね。それくらいのことはしてくれていたんだと思おうか」

 その人はもしかすると東欧の出身だったのではないかと病院でQ・Pは聞いた。Q・P自身、少々周囲と違う血筋が入っているのではないかと感じていたことがある。
 墓石にはAnna Vogelと刻まれていた。そこでQ・Pは目を閉じて祈った。

(ありがとう、お母さん)
(もしも本当のお母さんじゃなかったとしても、あなたの望んでいた子は、きっと、幸せに生きているよ)

 Q・Pは休日にドイツテニス協会に来ていた。もちろんレンドールの車に乗って。目的は、レンドールの私物を預かるためだった。
 ケン・レンドール監督がU-17ドイツ代表監督を辞めるというニュースは、またたく間に国内を駆け巡った。と、言えるほどの国を揺るがす一大事ではさすがにないが、テニス関係の界隈ではそれなりに騒ぎになったようだ。
 例えば一年くらい前に二人にインタビューをした記者は、監督を辞めたあとはGTAに戻り(建前上『戻る』という扱いになっている)、選手の専属コーチになるという噂を聞きつけて、『それって青い鳥のことですよね!』と、レンドールに電話を掛けてきたそうだ。レンドールは、隠し立てする必要もないが変に目立っても困るので記事にするような話にはまだしないでほしい、とオフレコを頼んで、事情を話したと言っていた。で、Q・Pはプロに転向したらすぐに彼女のインタビューを受けることが決定している。

「はぁ……レンドールさん、ホントいい人だったからなぁ」
「本当だよな。優しいし、物腰も低い人だし、めっちゃ有能だし」
「次の監督は結構厳しいって噂だぜ?」
「嫌すぎる……帰ってきてくれレンドールさん! 今からでも全然遅くないから!」

 などという協会のスタッフの会話が荷物整理を手伝いに来たQ・Pにも漏れ聞こえてきて、Q・Pはとても気分を良くした。優秀なうえに多くの人から慕われるレンドール監督なのだから、惜しまれて当然だ。

(そもそもレンドールを退任させようとしたのは協会の方なんだから)

 こうとまで言ってしまっては悪いのかも知れないが、自業自得なのである。レンドールだって、協会側から辞めるようにと言われたから、それなら辞めてQ・Pのコーチになろうと思ってくれたのだ。

(でも)

 本当にそれでいいのだろうか。
 賛辞を聞いているうちに、Q・Pの胸にも微かな不安の影が過ぎった。スタッフに慕われているレンドール監督。代表チームも皆、監督のことを深く信頼していた。それは、彼が選手をきちんと見ていてくれるから。様々なプレッシャーから守ってくれるから。負けても責任は自分が負うとさえ言ってくれるから――。

 Q・Pは首を振った。段ボール箱をひとつ車に乗せて、再びレンドールのデスクに戻る。付近には女性スタッフが集まっているようだった。あまり気にせず近付こうとすると、高い声が響いて聞こえた。

「あーでもほんとショックだなぁ。レンドールさん」

(さっきのスタッフと同じ話だね)

 会話内容なんて自分にはもう関係ないとQ・Pが思っていると、「私狙ってたのに!」と聞こえてきて、思わず身体がびくりと反応してしまった。

「それいつも言ってただけでしょ、マルゴット」
「だって、食事に誘っても忙しいからっていつも断られちゃうし」
「それ、脈なしってことでしょ?」
「でもぉ」
「実際忙しそうだったもんねー。てか恋人いないワケないじゃんってあたし言ったよね?」

(ケン、やっぱりモテてたんだ)

 ぎゅっとQ・Pは思わず右手を握り締めた。もちろんわかっていたことだ。レンドールは穏やかで優しくて、でも意外と押しが強いところもあって、身長も高くて、スタイルも整っている。グリーンの瞳もいつも性格を表すように優しく見つめてくれて、しかもそのうえ、世界代表の試合の監督という輝かしい経歴及び収入があったのだから。それは当然モテるよね、と思っていた。Q・Pが目の当たりにしたことがないだけで。
 Q・Pは、シャツの内側にある硬さを指先で触った。出かけるときにはいつもチェーンを通して指輪を持ち歩いていた。

「うう、しかも今日見たらね……」
「え? 何?」
「してたの、指輪」
「うそー!」
「えっマジ? 薬指?」
「……多分。すぐ外したっぽいから、確定かわかんないけど」
「えーじゃあムリじゃん。忘れなよ、マギー」
「それ、本当だったらみんな泣くわよ?」

(ケン、指輪してきちゃったんだ)

 外では指摘されるとややこしいことになりそうだから外しておこうと言っていたのに。そういう、ちょっと抜けたところもあるのだ。チクチクと胸に刺さった棘をQ・Pは軽く呼吸しながら飲み込む。
 どういう人がレンドールを狙っていたとしても、もうそれは意味のないことだ。だってもう自分たちは結婚している。自分はレンドールの妻だ。それは間違いないのだから。

 Q・Pが最後の箱を車に載せて建物の方に戻ろうとすると、レンドールが駆け寄ってきた。

「Q・P、ごめんね。スタッフと話してたら、キミに荷物を任せっきりにしてしまったね」
「構わないよ。引継ぎに関する話をしてたんだよね」
「アハハ、それが今になって辞めないでほしいだなんて、泣き付かれちゃって」
「そう……なんだ」
「僕も次の職場があるから、今さらそんなことを言われても困るだけなんだけど」

 Q・Pはじっとレンドールを見つめた。それから、ケン・レンドール監督の雄姿を思い出していた。温厚で、誠実で、すべての人々から慕われていたレンドール監督。彼が昔自分のコーチ(本当はそうと言えるほど彼と交流できていたわけではないけれど)だったことは事実で、もう一度、自分のコーチになってほしいと心の底では思っていたのもまた事実だ。
 けれど、それは自分のワガママで。

(『レンドール監督』は――)

 本当は、自分だけのコーチにすべき器の人ではない。Q・Pは自分のなかにある認めたくない思いを取り出して見つめた。誰もが彼を喪いたくないと思っている。それなのに、この世界で自分だけが――、彼を手に入れて良いのだろうか。

 Q・Pはぽつりと、「やっぱり監督に戻った方がいいんじゃないかな」と呟いた。

「何を言ってるんだい、Q・P?」
「ボクのことなら平気だよ。主任とは、ちゃんとやっていけてるから。これまでも」

 彼がコーチとして傍にいなくとも、もう不安はないはずだ。だってレンドールはもう家族なのだから。昔みたいに、コーチと教え子だから繋がっていられるというような理由は必要ない。自分は一人で立って歩けるし、彼の背を応援してあげることだってできるはずだ。愛する人なら。

「……Q・P、こっちにおいで」

 いつもよりも鋭い声がQ・Pの腕をぎゅっと掴んだ。建物の影の方に連れていかれたと思うと、ぎゅっと抱き締められる。外では珍しい。こんな場所で、とQ・Pは感情の動かないまま、事実だけを考えた。

「もしかすると僕の言葉が足りていなかったのかも知れないけど、僕は望んでキミのコーチになりたいと思っているんだ」
「でも……」
「キミの主任コーチはとても優秀な人だよ。見ていてよくわかった。キミがここまで成長したその功績はすべて彼やGTAのものであって、そこに僕の関与はない」
「ッそんなこと」
「Q・P、これは事実なんだ。これまではそうだった。キミのテニスに僕は無関係だったんだ。でも、これからはそうじゃない。これから先は、キミが輝かしい栄光を得たときには、もしも挫折をしたとしても、すべて、僕たち二人で分かち合えるんだ。その権利を――僕は他人に渡したくない。だからキミのコーチにしてほしいと名乗り出たんだ。これは誰でもない僕自身が望んだことなんだよ」

 ちゃんと伝わってる? とレンドールは尋ねた。声にあった凛とした鋭さは消えていて、いつもの穏やかな声だ。

「キミは、キミ自身の価値をきちんと理解するべきなんだよ。Q・P、キミには契約を結びたいと名乗りを上げる企業がいくつもあって、専属コーチになりたいと思っているGTAのコーチが何人もいる。そういう人なんだ。キミのコーチになるということにはそれだけの重みがある。でもキミはそのなかで僕を選んでくれたんだろう?」
「……うん。ボクはケンが一番いいと昔からずっと思ってるよ。ケンは」
「キミのコーチになりたいんだよ。今度こそ。僕自身の手でキミを最高の選手と呼ばれる人にしたい――本当はずっとそれを望んでいたからね。僕の気持ちはちゃんとわかってくれた?」

 Q・Pはこくりと頷いた。最初から信じていないわけではないし、彼から向けてもらえるものを疑っているわけでもない。ただ、レンドールが昔自分に与えてくれたものが大きすぎるから。この人はきっと、自分を犠牲にしてでも、Q・Pにとって一番良い状態を目指そうとしてしまうだろうとわかっているから。

 けれどそれを「わかってない」とレンドールは言っているのかも知れない。あの日遠くへ行ってしまったレンドールをずっとQ・Pが想っていたように、彼もまた、いつか戻れる日を待っていてくれたのだろうか。
 キミはいらない人形なんかじゃなくて、キミは完璧な品質の青い鳥なんだ。

 ――だから、今度こそ僕が、キミの一番近くでキミを支えたい。

「じゃあもうこの話は終わりにしよう。ハハ……、こんなことなら余計なことを言わなければ良かったなぁ。僕はただ、話が長くなってしまったことに言い訳がしたかっただけなんだよ。可愛い奥さんに、サボってばっかりだったと思われたくなかったから」
「そんなこと、ボクは全然思ってないよ」
「うん、良かった。誰も本気じゃないんだ。今さら戻るなんて土台無理な話なんだし……、だから忘れて」

 レンドールが自分に言ってくれる言葉を信じよう、とQ・Pは思う。いや、いつも信じている。間違いない。ただ。それでも。

(――犠牲なんて)

 誰も望んでいない。そんなものは、誰かを傷付けるばかりだ。そう思う。彼の意志を捻じ曲げることがこれ以上あってはならない。自分の所為で。それだけは嫌だ。
 もし彼が対価を差し出すのなら、自分はそれ以上のものを差し出さなければいけないのだろう。きっと。

「正直なことを言うとね、僕は羨ましかったんだ」
「羨ましい?」
「前にキミのチームの主任の話を聞いただろう? そのときに、キミがGTAのすべての選手を倒してみせたときのことを聞いて、あぁ、それはきっと僕が見たかった光景だったのにって」
「そうなの?」

 レンドールは穏やかに笑っていた。コーチの感情は、Q・Pにはあまりよくわからなかったけれど、多分、傍で成長を見守っていたかったという意味なのだろうと思う。もちろんQ・Pも、彼と共に成長できたらもっと良かったと思っている。
 でもこれから先は、それを望んでもいいのだ。

(いいんだよね)

 ぎゅっと手を握り締める。この手で未来を切り開いていく。レンドールと共に、二人で。そう誓う。

「それじゃあ帰ろうか。何もしてないのにもうお腹ぺこぺこで、キミの料理が早く食べたいよ」
「わかった。ケンの好きな料理を作るね。そういえば、ケン、指輪してきちゃってたの?」
「いやー、そうなんだよ。大事なものだから、できるだけ身に付けておきたくてね」

 レンドールはポケットから指輪を取り出して嵌めると、軽く唇で触れた。それは、何かへの誓いの口づけのような、そんなようにQ・Pには見えた。


全部捏造だー! いつも全部捏造ではあるが。まじで原作のキャラがレンドールとQ・Pしかいねぇ。
理事長夫婦の話とかレンドール家族、Q・Pのお母さんの話とかちまちま考えていたので全部書き残しました。まだ続く(続くって何???)。
Q・Pちゃんって結構ドイツ代表で揃ってると色味がなんとなく違うなーって感じていて、ちょっと別の血筋入ってたりするんじゃないかなぁとか思ったりしてますね。
実際のところ孤児院でもそういう施設でもなんでもない単なるテニススクールが赤ん坊を引き取ったってどういうこと??? ってめちゃ思っている。本当に誰が育ててんの??? シッターさんとか雇ってたんかな。謎。

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