Vogel und Katze

青い鳥たちの話。

「あれ、Q・P、何付けてるんですか?」

 日本戦を終えて少しした頃にベルティに訊かれて、Q・Pはテニスバッグに付けていたマスコットをちらりと見た。

「青い鳥だよ」
「見ればわかります。買ったんですか? どこで?」
「ううん、これは貰ったんだよ」
「貰った?」

 ベルティは首を傾げる。Q・Pはボールチェーンを取り外して、マスコットを彼の手に手渡した。

「オニから貰ったんだ」
「オニって……日本戦でQ・Pが対戦した選手だよね?」
「そうだよ。手作りなんだって。こういうものを作るのが得意なんだって彼は言ってた」
「それで、Q・Pに、この青い鳥をくれたの?」

 Q・Pが頷くと、ベルティはやっぱり不思議そうに首を傾げたのだった。
 彼の言いたいことはQ・Pにもわかる。実際鬼から渡されて、どういう理由で対戦相手にマスコット人形を、作って、渡してくれたというのだろうかと考えたものだ。隣にいた入江は、「いらなかったら受け取らなくてもいいけどね」と、やや嫌味な感じで言った。しかも直後に「なんてね」なんて付け加えるので、対戦したときと同じ人を食った態度だとQ・Pは少し苦手に思ったのだった。
 だが、鬼の方は「いい試合だったからな」と言っており、そういえば彼の手首は平気なのだろうかとQ・Pの方が思ったのだが、このような作業はできる程度であったらしい。かなりタフな人だ。

 青い鳥のモチーフについては手塚に聞いたと鬼は言った。彼なら青い鳥がいいだろうと言っていた、と。
 見ず知らずの人のプレゼントをQ・Pは苦手に感じることも多いが、対戦相手であり信用性の高い人だと思ったので、ありがたく受け取った。マスコットの青い鳥も可愛らしい顔をしていたので、無碍にする気はない。それで、今はテニスバッグに付けて持ち運んであげているのだ。

「ふーん、そうなんだね……。じゃあ売ってないんだ」
「欲しいの?」
「いや、まぁ、別に」
「ベルティはこういうのが好きなの?」
「まぁ、可愛いからね」
「オニに聞いてみようか?」
「いや、いいよ」

 じゃあ練習に戻る、とベルティは青い鳥を返して立ち去った。Q・Pは改めて手のなかの青い鳥のマスコットを見る。可愛らしい。よくできている。貰ったときにレンドールにも見せてあげたら、「とても可愛いしキミに似合っているよ」と言ってくれたので、ますますQ・Pは喜んだのだ。

(イリエも、オニは作るのが好きだから貰ってあげれば喜ぶだけって言ってたし)

 きっと、マスコットを見て欲しいと言っていたと言えば、鬼も喜ぶことだろうとQ・Pは思った。その後、彼がベルティにも作ってくれるかどうかは別のこととして。そもそも大会も日本とスペインの試合で終わるのだし、それまでに完成させる時間があるかわからないのだから。

(でも、何のマスコットがいいんだろう)

 Q・Pに関しては、手塚がそう言ってくれたように、やはり『青い鳥』だろう。レンドールもいつもそう言っている。Q・P自身も、自分は青い鳥の仲間だと思っている。そう思っていると、鳥が飛んできたくれたので、よくするように指に乗せてあげた。
 鳥が飛び去るのを見送りながら、ベルティの方について考える。

(ベルティは可愛い動物が好きなんだね)

「Q・P、何を留まっている?」
「ボルク。ちょうどよかった」

 タイミング良くベルティの兄が現れたのでQ・Pがそう言うと、「お前がそういうことを言うのは珍しいな」とボルクは言った。

「ベルティのことだけど」
「ヤツがどうした?」
「好きな動物とか知ってる?」
「何の話だ」
「さっきベルティが、ボクがオニから貰ったマスコットを欲しそうにしてたから」
「ああ、先日貰ったと言っていたものか」

 会話をすることの多いボルクには、マスコットの話をすでにしていた。彼はマスコットを一瞥し、「そうか」と呟く。

「知らなかったよ、ベルティがこういうマスコットが好きだったなんて。彼の分をオニに作ってもらえないか聞いてみようと思うんだけど、どの動物が好きかボルクは知ってるよね?」
「知らん」

 ボルクはきっぱりと言い捨てた。えっそうなの、とQ・Pは驚く。Q・Pには兄弟はいないが、多分、兄弟というのは、互いの好みを知っているものなのではないだろうか。そう思っていた。

「そもそもそういうマスコットが好きだという話も今初めて知ったな」
「そうなんだ」

 そういうものなのか、とQ・Pは思う。ボルクとベルティは兄弟で大会に参加しているが、二人で話しているところを見たことがないというほど大袈裟なことはないにしても、大体揃っていることはない。ベルティはいつもダンクマールといるし、ボルクとよく喋るのはQ・Pやミハエル、そして手塚なのだ。
 生まれたときから家族のないQ・Pにはわからないが、実際の兄弟の距離感というのはこういうものなのだろうか?

 マスコットが好きだということならダンクマールは知っているかも知れない。もしかすると好きな動物のことも、ボルクより詳しく知っているのだろうか。
 Q・Pは考える。チームメイトであるベルティ・B・ボルクという人のことを思い出してみる。

「スマホのカバーに猫のステッカーが貼ってあったから、猫が好きなのかも知れないね」
「ベルティのことか?」
「他に誰がいるの?」
「いや……そうか」

 もしかすると彼はそんな単純な観察上の事実すら知らないのだろうか。ただユルゲン・バリーザヴィチ・ボルクという男が、テニス選手にしか興味がないだけということなのかも知れない。彼が最も戦いたくない相手として実弟の名を挙げていることは事実だ。

 その後、ダンクマールにも訊いてみると「ベルティなら猫が好きだよ」と言ってくれたので、安心してQ・Pは鬼に猫のマスコットを頼むことができた。
 ――青い鳥が食べられたりして。なんてね。
 と、また入江に言われて、困惑というか、ちょっと呆れたのはまた別の話だ。


ねこちゃんと青い鳥の話。ねこは全然捏造でした。ファンブックの話は、ベルティは可愛いマスコットが好きって話なんですよね? Q・Pちゃんがベルティにもって鬼に聞いてくれるのめちゃかわいい~優しい先輩だよね~萌え萌え~。ってずっと言ってる気はする。

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